
大学やサークルで、学校やチームのロゴを入れてオリジナル・スポーツウエアをつくったことのある人は多いでしょう。専門店に行けば、カタログで素材を選んでロゴを指定するだけで気軽にオリジナル・ウエアがつくれます。素材の背景を気にする人はほとんどいないかもしれません。
アメリカでは、大学が販売するロゴ入り衣料品の生産の陰で行われていた労働搾取について、学生たちが反対に立ちあがりました。
チームのウエアを作るとき、安くてかっこよければいいということしか考えたことがありませんでした。製品の背景を、私たちがもっと知ろうとしなくてはならないと思います。
東京外国語大学ラクロス部 大垣佐千子さん
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労働者の賃金は、大学の利益の18分の1
大学のロゴ入りTシャツやスウェット、帽子といった衣料品は、アメリカとカナダで25億ドル(約3千億円)という一大マーケットを形成しています。しかしその多くが、労働者が低賃金で劣悪な労働環境のもとに働かされる「スウェット・ショップ(搾取工場)」で生産されています。ドミニカ共和国のある工場では、労働者は政府が定めた最低賃金の3分の1しか受け取っていません。19ドル95セント(約2400円)で売られる帽子ひとつにつき、大学が得る利益は1ドル50セント(約180円)。一方で労働者が受け取る賃金はわずか8セント(10円弱)に過ぎないのです。
1998年3月、デューク大学の学生たちはこうしたスウェット・ショップ反対に立ち上がり、大学に対して、ロゴ入り製品の発注の際、労働者の人権や労働条件を守るための「行動基準」を取り入れることを認めさせました。これに賛同した他大学の学生たちも次々に同様の行動を起こし、スウェット・ショップ反対運動のための全国的な学生組織が、アメリカとカナダで生まれました。
その後、この「行動基準」が守られているかをチェックする組織として、非営利組織のWRC(Worker Rights Consortium)が設立され、生産地のNGOなどと連携して生産現場の聞き取り調査を行なうようになりました。組織に加盟する57の大学は、生産現場における労働者の賃金や労働時間などの情報を公開することを義務づけられています。
初めての勝利
2000年5月3日、スウェット・ショップで働いていた8人の労働者が、工場主から17万2千ドル(約2千万円)の補償金を勝ち取りました。99年11月にロサンゼルスで起こされたこの裁判の被告は、アメリカの主な大学のロゴ入り製品やナイキ、リーボックなどの製品をつくっている“J.H.Design Group”。その工場では、労働者たちは毎日10〜12時間、週7日間休みなく働かされ、低賃金で残業代も支払われず、言葉の暴力や人種差別などの不当な扱いを受けていたのです。
この裁判によってスウェット・ショップの実態が広く知られることとなり、それまでに多くの大学が取り入れてきた「行動基準」の実効性が試される初のケースとなりました。J. H. Design社に製品を発注していた大学のひとつ、インディアナ大学では、全学生の署名を送って労働者への支援を表明しました。
勝利を勝ち取った原告の労働者のひとり、アドルフォ・サンチェス氏は、「学生の皆さんがJ. H. Design社に圧力をかけてくれたおかげです。この裁判が、他の衣料品工場の労働搾取をなくすことにつながることを願っています」と喜びを語りました。 |