「グローバリゼーション」がもたらしたもの
途上国において有名ブランドの生産工場でひんぱんに人権侵害が起きているのはなぜでしょう?
貿易の「グローバル化」によって、先進国の企業はどんどん生産拠点を労働コストの安い国に移転し、リスクを低くするため生産を外注しています。生産国の製造業者は、厳しい受注競争のもとで価格の引き下げを迫られ、さらに小さな工場や家内労働者などに下請けに出すことで、より立場の弱い人々へ過酷な労働条件が押し付けられることになります。人件費が上がれば企業はすぐさま賃金のより安い別の国へと生産拠点を移し、後には大量の失業者が残されます。利益を第一とする企業倫理のもとでは、生産者は人権を持った対等なパートナーではなく、単にコスト要因のひとつとしか見なされません。今日、企業が大規模化、多国籍化するに従って製品の供給ルートはますます複雑になり、製品がどこの工場でつくられているのかメーカー自身でも把握できないことが珍しくありません。たとえそこで人権侵害が起きたとしても、メーカーのみならず、当然ながら消費者には全く見えないのです。
日本でも衣料品業界の「グローバル化」は急速に進んでおり、既に衣料品の55%が海外、特に人件費が日本の10分の1以下という中国やタイ、ベトナムなどのアジア諸国から輸入されています。グローバル・ヴィレッジは、日本で販売される衣料品の生産においても「企業行動規準」の導入を促進すべきと考え、2001年3月に、日本の大手アパレル・メーカーや小売店、海外ブランドのライセンシー16社にアンケートをお願いし、企業が生産工場における労働基準をどの程度遵守しているかを尋ねました(結果の報告はこちら)。その結果、回答に応じてくれた10社からの答えはいずれも、明文化した基準がない、取引先工場での実態を把握していない、品質のチェックはしても労働者の権利が守られているかまでは調査していない、というものでした。
消費者が、生産者の人権を無視してつくられた製品は買いたくないと思えば、企業に対してもっと製品の背景について知りたいと意思表示し、情報公開を求めていく必要があります。
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根本的な解決を目指すために
しかし、「グローバル化」がもたらした先進国と途上国、都市と農村などの二極化を放置したままで、企業に現状の改善を求めるだけでは、問題の根本の解決にはなりません。
グローバル・ヴィレッジは、1998年にバングラデシュで衣料品産業の実態調査を行いました。GDP(国内総生産)の60%を繊維産業が占めるというバングラデシュでは、ここ10年ほどの間に、農村から都市の衣料品工場への出稼ぎが急増し、農村の荒廃と都市の社会不安を招いています。首都ダッカの工場で針子として働く女性たちは、法で義務づけられているはずの雇用契約書や出勤カードもなく、賃金の支払いが遅れてもいつでも自分たちをクビにできる工場主に対しては文句を言うことすらできないと、その窮状を訴えていました。
これらの工場で働く人の多くは、地元では収入を得る術がないために都会に出てきた出稼ぎ労働者で、生まれ育った地域や家族と別れ、スラムの劣悪な環境で暮らしています。都会で働くことが本当に自分たちの希望なのか、という問いに対し、みな口々に「地元で仕事があるなら戻りたい」と答えました。工場における労働条件の改善は、当面の問題解決にはなっても、本当の意味で労働者が自立を果たしたとはいえません。
「グローバル化」した経済構造の中では、手工芸生産から労働集約型の工場生産への移行は、経済発展の当然の帰結とみなされています。しかしそれが、働く人々や地域社会の発展を犠牲にするものだとしたら、いったい誰のために経済発展を目指すのでしょうか?
もしも、人々がそれぞれの地域で、地元で採れる原料や伝統の技術を活かして製品をつくり、公正な対価を得られるなら、それが本当の「自立」であり、「発展」とよべるのではないでしょうか。
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